2019.09.12

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

「MACHINA CYCLES BROOKLYN」

これがニューヨーカーが集うコミュニティガレージの全容。米車、英車、日本車、カフェレーサーからスーパースポーツまで車両は様々。奥には自由に使えるピットもあり。

自分の趣味に没頭できるガレージは、クルマやモーターサイクルを愛する者にとって、 時に家のリビング以上に居心地の良い場所となる。今回訪れたのは、そんな楽しい時間を共有しているブルックリンのコミュニティガレージ。

 世界を引っ張る大都会ニューヨークシティー。東京でいう銀座や日本橋、新宿、渋谷がマンハッタンだとすれば、ブルックリンは中目黒や高円寺、蔵前、清澄白河? ……その例えが正しいかは別として、ブルックリンはニューヨークのサブカルチャーの発信地となっている場所。

 観光ガイドにも載っているウィリアムズバーグはマンハッタンと遜色ないほど綺麗だし、昔ながらのレンガ造りの建物をリノベーションしたダンボのように、ブルックリンらしいエリアも盛り上がりを見せている。今回お邪魔したのは運河沿いの旧工業地帯で、リノベーションした倉庫を中心にクリエイターが集まってきているというゴーワヌスエリア。9thストリート沿いに構えるコミュニティガレージ「マキナ・サイクルズ」には、熱い二輪乗りが集っていた。

 このコミュニティガレージを案内してくれたのは、ニューヨーク在住の日本人、佐藤正朗さん。彼は有名メゾンを渡り歩き、フリーランスのパタンナーとして活躍するゴリゴリのファッション業界人。にも関わらず趣味は旧車いじりという、とてもセンスのいい人物なのである。

 「ネコ・パブリッシングっていったら『2ストロークマガジン』じゃないですか!? アメリカの紀伊國屋で買って愛読してますよ」

挨拶するやいなや、年2回しか発行していないうえ、コアすぎて日本でも一般認知度が低めな弊社のバイク雑誌を読んでくれているあたり、かなりのエンスージアストであることがわかった。話によると、モーターサイクルカルチャーが息づくアメリカにおいても、ギークに旧車について掘り下げた雑誌は少なく、日本の二輪誌は貴重な情報源なのだという。

1972 KAWASAKI 750SS (MACH Ⅳ):2ストでナナハンという化け物バイクを駆るのは佐藤正朗さん。北米をターゲットに作られたモデルだったが、オイルショックや環境規制のあおりもあって4年で生産終了した希少車だ。

契約者は好きな時に来て好きに愛車を出し入れして、ピットも使える。荷物置きにはパーツが雑多に置かれていた。

自由に使えるピットスペースには、旋盤や溶接機など個人所有しにくいような機械もあり、パーツを自作するツワモノもいる。

空間と趣味を共有するガレージ。

 そんな正朗さんの愛車はやはりツースト。「KAWASAKI 750SS MACH Ⅳ」だ。70年代初頭カワサキの名前を全米に轟かせることとなった500ss MACH Ⅲのボアアップバージョンとして登場したMACH Ⅳ (通称H2)は、当時世界最速に君臨した2ストローク3気筒のモンスターマシンだ。ご存知の通りマッハは日本でも熱狂的なファンがいて、今ではヴィンテージバイクとしてウン百万で取引されている代物だが、正朗さんは知り合いが手放すというので数十万円で手に入れることができたというから運がいい。

 ニューヨークシティーからでも少し走れば自然豊かな街が広がっているので、マッハを足にして休日は仲間や奥さんとツーリングに出かけている。山間部まで足を伸ばし、ツーストならではの伸びのある走りを楽しむのがたまらないのだとか。

 彼の自宅はニューヨーク北部のブロンクスにあるが、整備できる場所があって、盗難の危険性もなく、奥さんのものを含めて3台のバイクを置けるスペースを探した結果、このブルックリンのコミュニティガレージにたどり着いた。自宅から距離はあるものの、電車を利用して行きやすく、幹線道路の近くだから仲間との集合場所としても重宝しているらしい。

 「69年のBMW R69S、75年のNORTON Commando、77年のDUCATI SPORT DESMO500……。新しいのもありますが、古いのに乗っている人も多いので話が合っていいんですよ」

 日本では車輌の整備はプロショップにお任せするのが一般的だが、アメリカの人はとりあえず自分で弄ってみて、ダメならショップに持って行く、というのが普通の感覚のようで、そのぶんマシンへの愛着が深い。このガレージでは、常に誰かがバイクをいじっていることもあり、ガレージを借りている人同士での交流も盛んのようだった。

 正朗さんにお願いしてガレージから愛車を出していただき、マッハのエキゾーストノートを聞かせてもらった。「パリパリパリパリ!!」一瞬耳を塞ぎかけてしまう力強いツーストサウンド。

 「ニューヨークでそんなの乗ってて怖くないの? って聞かれますけど、そんなに大きくないからアメリカンとかに比べたら取り回しも全然いいですし、排煙があるからみんな車間をあけてくれて、寧ろ安全かもしれません(笑)。もちろん、僕だって街中を走るときはいつも迷惑だろうなーって思いながら遠慮して走っていますよ?」

 やれエコだ、やれEVだといわれているこの時代、甲高い排気音と白煙を吐き出す時代錯誤な旧車が、世界一の大都会を走っているとは。しかしながら、彼のような良い意味で物好きな人が世界にいるのだから、旧車好きも励まされるだろう。

ニューヨークのパーソンズ美術大学卒というモードファッションのエリートも、ガレージで作業をするときはツナギ。 愛車のオリジナルの良さは活かしつつ、足回りや電装系は現代的にモデファイしている。

オリジナルの雰囲気を残した、1972年製のホンダCL350。日本の旧車はスポーツレプリカよりネイキッドの方が人気のようだ。

ガレージの前に停められたダッジバンはお客のものか定かでは無いが、これだけ大きければバイクのトランスポーターとしては充分だ。

 
 
Photo:Sochi Kageyama
Text:Junpei Suzuki
媒体:『VINTAGE LIFE』 Vol.21

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