2019.10.02

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

「バイオハザードモードにシビれた!」 夏野剛氏インタビュー

慶應義塾大学の特別招聘教授にして、i-mode生みの親として知られ、TVでのコメンテーターとしてもお馴染みの夏野剛さん。毎日モデルSを足にしているEVオーナーということで、 夏野さんのテスラライフやEVにまつわる様々なことを語っていただきました。

 テスラは日本でモデルSが発売された2013年から、もう丸5年くらい乗っています。当時、イーロン・マスクが来日するので、会いたいか?って話がありまして。「もちろん、会いたい!」と伝えたところ「ではまず試乗を」となり、それがテスラとの出会いでした。

 僕は基本的にクルマに関心がなく、クルマに求めるのは静粛性と運転のしやすさとカッコよさだけ。家には自分と奥さん用にメルセデスが2台というスタイルでした。

 テスラなんてワケわからないメーカーのクルマが、100年以上歴史があるメルセデスに勝てるわけないだろ」と思い、青山の試乗会に行ったんですが。乗ってみたら「なんだこりゃ! イケてんじゃん!」と。静かだし、ステアリングの操作部分がメルセデスと一緒で違和感がない。なんといっても中央には17インチディスプレイ! 

 「俺が買わないでだれが買うんだ!」となりましてね。翌日に家族を連れてもう一回行ったんです。オプションでトランク部分に子供用シートがつけられるんですが、子供たちはあれにイチコロで「乗りたい乗りたい」となり。奥さんからも「カッコいいし、静かでいいよね」って賛同を得て、その場で決めました。

 当時、申し込みが9月で納車は1月。予約したことをツイートしたら川上さん(カドカワ社長の川上氏)がそれを見て真似しまして。あとから申し込んだくせに、キャンセル車を購入して僕より1週間早く乗ってましたね(笑)。ドワンゴのトップ2人がテスラに乗ることになったので、会社の地下にテスラの充電器を付けました。

 飲み会がある日以外は、毎日モデルSに乗っていますね。家にも充電器がありますし、都心ではガソリンスタンドよりも充電ステーションが多いくらいなので日常ではまったく問題ないです。都内から軽井沢へもギリギリ充電なしで往復できます。あと、実際に乗ってみる
と常に満充電にしておく必要もないんですね。

 全国のパーキングエリアとサービスエリアに充電ステーションがありますから、ご飯を食べているときに30分充電すれば、100キロ以上走行可能にはなりますし、都内から軽井沢くらいの往復であればギリギリ充電しなくても帰ってこれるんです。

「マーケティングすると中途半端な製品ができる」

 ちなみに、私がオプションで装着したトランクの追加シートって、なぜできたか知ってますか? これは、単にイーロン・マスクの家族構成が7人だったからなんです。一家で移動したいけど、そんなセダンが世の中にないということで設計したらしいんですが、そのストーリーが「ますます最高!」と。

 ほかにも、イーロン・マスクの個人的な趣味があちこち反映されていて「たまんない!」わけです。EVそのものとしても楽しいですし、スティーブ・ジョブズのこだわりがアイコン1つにも現れているiPhoneと似ていて、モデルSにもイーロン・マスクらしさや彼の私生活が反映されているところに魅力を感じています。

 僕もモノづくりの仕事をしていたのでわかるのですが、中途半端な製品ができるときは、皆でマーケティングして優先順位を決めることが多いんです。国産高級車でもこんなに高級なのに、なんでここはチープなんだとか、いいデザインなのにどうして表示が日本語なのかとか。そういう部分が山ほどあるんです。好き嫌いはあると思いますが、イーロン・マスクのように経営トップの拘りで作っているものは、絶対に妥協がありません。妥協がない製品ということでモデルSの購入を決めたんです。

 ダイソンの掃除機も好きだし、バングアンドオルフセンのオーディオも使っている。常に新しい世界を開いていくのはそういう、拘りを持った経営者が作った製品なんです。みんなの合議制でマーケティングされた製品にはなんのメッセージ性もないのです。

「生物化学兵器防衛モードにシビれ、モデルSに決定」

 購入したのが初期のモデルSで、2016年にマイナーチェンジしたのですが、ハード面で1個だけついてない機能があったんです。それがオプションの「生物化学兵器防衛モード(バイオハザードモード)」! 空調のアイコンの隣にバイオハザードマークがついていてシビれました!!

 これを押すと「グオーン」とHEPAフィルターを通して外気を取り入れるんです。これはイーロンがロスに住んでいて、光化学スモッグが嫌だから付けたのですが、生物化学兵器やバクテリアで汚染された外気を清浄するということで北京でバカ売れしたそうです。グレードはP100Dなのですが、現在販売されている後期型で完全自動運転に対応するハードがすべてついたモデルになりました。

 自動運転でいうと、僕は慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスの特別招聘教授なので、湘南まで東名高速をテスラの自動運転で通っています。これが本当に楽! ただ、自動運転に関しては、僕は東京の市街地では必要はないと思います。なぜなら、自分で運転したほうが早いから。日本でいちばん守られていない法律は道路交通法ですよね? それを教習車のように法定速度を守る自動運転のクルマが走ると、たぶん大渋滞を引き起こすはずですから。

 本当に自動運転社会を実現するためには、人間側のルールや歩行者のモラル、安全システムも改定する必要があり、それを怖がっていると自動運転社会は到来しません。ただ、高速道路はいけると思います。高速道路や、自動車専用道路だけを完全自動運転OKにして、一般道での自動運転は慎重にやればいいのではないでしょうか。

 ただ、日本はこのままいくと自動運転に関しては世界で一番遅れると思います。これはすべて国土交通省と警察と日本の自動車メーカーのせいでしょう。

「来年からテスラ1強がガラっと変わりそうです!」

 今度、ポルシェやアウディもEVを出してくるじゃないですか? テスラがイノベーションを起こしたあとで、クルマづくりのノウハウを持った会社がどんなEVを出すのか? とても興味があります。テスラ1強からガラッと変わるので面白いですよね。

 ちなみに、モデルSのユーザー層はマセラッティのクアトルポルテと被っていて、レクサスとは被っていないそうで、テスラオーナーはIT系のオーナーも多く、そうした傾向も面白いですよね。

 またPHVも各社でどんどん出てきていますが、メーカーで味付けの違いが出ています。たとえばプリウスPHVは時速20キロくらいになるとエンジンがかかりますし、EVモードにしてもすぐに解除されます。トヨタは燃費第一。乗り心地とか静粛性とかよりも「燃費だーっ!」という感じがします。

 一方でボルボのPHEVはEVモードにすると電池がなくなるまでEV走行してくれる。電池が小さいので、25キロくらいまでしか走れないけど、電動にしたいという意思があるときはとにかく電動で静かにずっとEVで頑張るんです。グループののポールスターとかも楽しみですよね。

「クルマの世界にITが入っていく」

 最近はクルマの世界がITを取り入れていく流れなので、クルマ関係の仕事も多いんですが、運転支援機能の味付けもメーカーによって異なります。

 テスラの場合は「なるべくオートパイロットを使いなさいね」っていう仕様に感じます。それに対して、メルセデスのインテリジェントドライブは、ドライバーに運転支援をしているというメッセージをなるべく送らないという発想に見えます。テスラと同じくらいのアシストやアダプティブクルーズコントロールがついていますが、随分違います。

 日本車に至ってはハンドルのマークが光るだけで、自動運転になっているかよくわからない。だから自動運転を推奨するメーカーかどうかは、クルマに乗ってみるとよくわかります。時代的には推奨する流れなんですが、ビビりながらやっているメーカーか、本気なのかの違いがあります。

 テスラのどこがすごいかというと、EVということよりもユーザーインターフェースを根本から見直したことだと思います。徹底的にユーザーサイドに立っていて、具体的にはクルマの情報をなるべくコンソールに出してユーザーに教えるなど「できるだけ自動でやってみて」とうながすインターフェースになっています。これに対して今までのクルマは、情報をなるべくドライバーに教えないように見えます。

 音声認識も認識率が高いので、テスラに乗ってからはバンバン使うようになりました。ちなみに、クルマの楽しみとか運転の楽しみ、いわゆる「FUNTO DRIVE」を求めてクルマを買っている人は0.1%もいないと思います。クルマは移動手段なので、快適に移動できる以上の価値はありません。歩行者を含め、安全を重視した日本の道路交通法を守るなら、サーキットでカートに乗るくらいでしか、運転する楽しみだけを追求できないのではないでしょうか?

 メーカーやクルマメディアが「運転する楽しみ」とかいっているの見ると、僕は「終わってるな」と思います。「移動の手段としていかに快適か」がいまのクルマは重要だと思いますね。

「Uber長者とラグジュアリーカー」

 先日、2週間ニューヨークにいたんですが、UberもUber XやUber BLACK(リムジン)とか5種類くらい選べてそれぞれをタップすると候補車の位置が出ます。これが自動運転にもなるとクルマを10台くらい持つ人が現れたりすると思います。

 例えば、自分のクルマをあちこちで走らせて、大阪に行くと大阪の自分のクルマが迎えにくるような。自分がいないときは、クルマが勝手に稼いでいる。そうすると、クルマ選びは、自分の運転の楽しみというより人が乗ったときに気持ちのいいクルマを買おうとするのではないのでしょうか? 「Uber長者みたいな(笑)」個人投資としてはかなり面白いんじゃないかと思いますね。

 Uber的なシェアサービスが日本でも許容されたら、クルマを持つ人は少なくなると思います。生活のための軽自動車とかワンリッターカーとかのクルマはこれから売れなくなり、快適性があり、ライドシェアにも使えるミドルレンジのクルマと、年収がある程度ある人が持つラグジュアリーカーの2つの価格帯の乗用車が売れるのではないでしょうか?

2019年10月2日(水)、東京・東雲のテスラ 東京ベイでのトークショーの模様。
 
 
 
【夏野剛 TAKESHI NATSUNO】
慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授。i-mode 生みの親として有名で、現在はニコニコ動画で知られる株式会社ドワンゴの取締役としても活躍。今回は、同社のミーティングルームにてインタビューをさせていただいた。夏野氏のメルマガ、週刊「夏野総研」では、独自のニュースキュレーションや既存ビジネスを解説中。
 
 
Photograph & Text:Soichi KAGEYAMA
媒体:『E MAGAZINE』 vol.1

NEWS of E MAGAZINE

ARCHIVES

RANKING

POPULAR TAG

NEWS

SEARCH