2018.11.12

大人の趣味の為のライフスタイルマガジン「IN THE LIFE(イン・ザ・ライフ)」

登別の蝦夷鹿② 50人のハンターによる大規模捕獲

『HUNT』では幾度にわたって狩猟の現場をお伝えしてきたが、自治体の行う駆除の現場は今回が初。森の守り人が集い、獣害の元凶エゾシカを撃つ。

直径数キロに渡って辺りを包囲

勢子も待ちも、それぞれ自分の持ち場にについて役目を果たすことで、成果を得ることが出来る巻猟。これは、人が集まったからといっておいそれと出来るものではない。年に数度行われるこの大規模駆除のように、ハンター同士が一緒に猟をしてきたからこそ成し得るのだ。

 農林水産省が発表した、平成26年の北海道におけるシカの農作物被害は、約44億円にも上った。

 北海道には現在推定48万頭のシカが生息しており、一番多かった平成22年の63万頭に比べれば改善したものの、もう大丈夫かというと、そうではない。エゾシカの繁殖力は凄まじく、1歳で成熟し、2歳になると毎年出産する為、単純計算で年率約20%の割合で増加してしまう。このペースでは4年で約2倍になる。もう少し数字の話をすると、2015年のエゾシカ捕獲数は、狩猟(定められた猟期で行う普通の猟)で約4万頭強、許可捕獲(管理捕獲など)で約9万頭強。いかに駆除活動が必要か考えさせられる。
 
 そんな中、登別市では、今年度初となる有害鳥獣大規模捕獲が行われた。これは毎年1月から2月にかけて数度行っているという、市役所主催の巻狩(まきがり)猟である。

 巻狩とは、猟場を四方から取り囲んで追い立て、目標の場所に追い込んで獲物を仕留める、複数人で行う猟の事。今回は市内を流れる登別川流域数㎞程の範囲を、猟友会室蘭支部のメンバー50人で包囲する。そして、この会を取り仕切るのは、支部長である先の伊奈さん。全国にいくつも猟友会の支部はあれど、こんなに多くの会員が集まるのは稀で、その団結力が窺い知れる。

この場に集まったハンターの多くは、普段は趣味としてハンティングを嗜んでいる人である。特に際立っていたのが、迷彩のウェアを着て銃を構えてらっしゃる山口さん。お気に入りの銃はドイツ製の「ボルトアクションライフルSAUER 202」。これは特注してゴールドのペイントを施してあるとか。また、ドローンを操り、上空からシカがいないかモニタリングしていた彼は、山口さんの息子さん。本来の趣旨とは逸脱するが、他人の道具を見られるのも、こういう場ならでは。

大の大人が、銃を背負ってシカを追う

今回の大規模捕獲作戦の収穫はいつもより少なめであったが、5頭を仕留めることが出来た。捕獲したものは、一部は各ハンターが自家消費用に持ち帰り、一部は自治体で行うイベントで振る舞うため、冷凍保存することになったという。

 勢子(せこ。森に入って獲物を追い込む人)は北、西、南の3班に分かれ、東にある登別川の谷へシカを誘導する。待ち(獲物が追い込まれてくる場所で待ち構えて鉄砲を撃つ人)は、川沿いに数百メートル間隔で待ち構え、銃を構える。
 
 各人が身に着けたトランシーバーから支部長の声聞こえて、猟が始まった。「オーイオイオイオイ」と声を出しながら、シカに存在を示しつつ、それぞれ勢子は間隔を空けて、目標地点までねり歩く。

 誰が言ったか、「勢子はほとんど猟という名の登山。原子的な方法であるが、猟は獲物と人間との知恵比べ。ひたすら歩きながらも足跡や獣道を探し、どこにいるのかを推理する。やがて囲い込む範囲が狭まってくると、丘の上から爆竹や、大きな音を出すための爆弾を投げ込み追い込みをかける」。
 
 一方待ちは待ちで、真冬の川辺でじっと待つ。追い立てられてやってきたシカは危険を察知し、警戒しているので、どこから飛び出してくるかわからない。とにかく目を皿のようにして獲物の姿を探すしかない。
 
 レシーバーに届く声。数秒の沈黙。谷にこだまする銃声。これが何度も繰り返される。かくして今回の捕獲作戦も終わりを告げた。

登別市において、エゾシカによる被害額が大きいのは牧草である。しかし、それは被害届があっただけに過ぎない。実際に山に入ってみると、樹皮や枝葉の食害や、逞しいオスジカによって行われたであろう「角擦り」の跡が見て取れる。こういった被害を目の当たりにすると、猟師はまだまだ森の守り人として活躍しなければならなそうだ、と痛感する。

登別ハンターのクルマは本気仕様

ランドクルーザー70ピックアップは、前出のハンター山口さんの愛車で、ハンティングの時に出動させる。荷台にはジュラルミンケースが備え付けてあり、ハンティンググッズが収納されている。

ベテランハンター東さんのパジェロJr.は、単管パイプを駆使した男気溢れるルーフキャリア付き。ウインチも備え、コンパクトながらしっかり仕事をこなす猟師の車だ。足回りも弄ってらっしゃるご様子。

photo:Daisuke Akita
text:Junpei Suzuki

NEWS of HUNT

ARCHIVES

RANKING

POPULAR TAG

NEWS

SEARCH