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TOPANGA CABIN
LAの観光スポットとして有名なサンタモニカ。ビーチやショッピングにはもってこいの街だ。そんな都サンタモニカのすぐ裏手に、長さ約50キロ以上も北西に広がるサンタモニカマウンテンがあり、岩山の渓谷、トパンガキャニオンが広がっている事をご存知だろうか?
トパンガの名は先住民の土地Tongvaから由来し、1920年代からはハリウッドスターの週末避暑地として多くのキャビンやコテージが建てられた。アクセスの良さもあり、現在でも多くのミュージシャンやフィルムメーカーなどが住んでいる。
そのトパンガキャニオンに魅了された一人の男がいる。Mason St. Peter。生まれも育ちもカリフォルニアで、幼い頃はスケートボードに熱中し、大学では建築を学んだ彼は、現在サンフランシスコとLAをベースに活動する建築家でもあり、奥さんとセレクトショップ「GENERAL STORE」も経営している。多忙な日々を送るメイソンはSFとLAを毎週のように行き来しており、あるとき友人のトパンガにあるスタジオへと足を運んだのが出会いだった。
クルマなど人工的な音が一切なく、ただ鳥の鳴き声だけがさえずるピースフルな渓谷を見て一瞬で虜になってしまい、LAで住むならここだ!と決めたメイソンは、すぐに敷地のオーナーに交渉を試みた。もちろん即決でキャビンを建てる事なんて出来なかったが、交渉の甲斐もありその後了承を得、着工することに。
だが着工といっても、デザインも工事も本人の手。友人も手伝ってくれたというが、週末に訪れては完全セルフビルドで少しずつ建てたキャビン。コンセプトはとにかくシンプルで使いやすい事。キャビンは家としてではなく、あくまでも小屋をして楽しむのが前提。何故なら住むとなるといろいろ規定があり家として登録しなければいけないのだ。120スクエアーフィート(約4坪)以下ならクリアできるので、キャビン自体はものすごくコンパクトだ。



森の木とキャビンの古材が調和する

内装の壁以外の木材は壊した建物の廃材を使用。ドアや窓、そして外壁に使用しているレッドウッドの木材はわざわざSFから自分達で運んできた。本業の建築の仕事の合間に週末の時間だけを使って制作したので時間を要してしまったが、誰もが憧れる理想のシンプルキャビンが完成した。普段はSFの大都会で生活し、週末はLAのとなりにある渓谷で充電する生活を送っている。
そこは流れるゆっくりした時間、あふれる太陽の光、風の音、鳥のさえずり、人間が生きていて誰もが平等に与えられている地球の恵みを改めて思い出させてくれる。普段街にいたら忘れかけている当たり前の事を気付かせてくれる大切な場所だ。
HUNT vol.11










photo&text:Yas Tsuchiya