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闘鶏こそが最高の娯楽! -牧場&闘鶏場のとある1日-
大事な子ブタはお供えに


ロタ島は北マリアナ諸島に位置し、サイパンから小型機で30分。ダイビングのメッカとして知られるロタ島。イメージでいえば、白い雲、青い空と海!……だが、HUNT的には、小ブタの解体現場からページがスタートする。なんでも村のお年寄りが亡くなったということで、明日はロタ島の中心ソンソン村で盛大なお葬式が行われる。島民全体が家族のようなロタでは知人が亡くなった際に家畜などを寄付するならわしが残っている。大事な小ブタを丸焼きにし、感謝してみんなでいただくことは、ロタ島では当たり前のことだ。
さて、ここはロタ島の中央部にある、シナパロ村の闘鶏場。軍鶏が相手に飛びかかり脚の爪で攻撃する習性を利用し、左足に小型のナイフを装着。生死をかけた勝負で観客は合法的にギャンブルを楽しむ。取材した日は平日のため闘鶏自体は行っていなかったが、毎週日曜に開催されるとのこと。ロタ島の住人も闘鶏用の軍鶏を育てていて、この戦いに参加することを趣味にしている人も多い。コンビニで軍鶏用の飼料も売っているほどメジャーである。
柵に囲まれた闘鶏場に一歩入ると、リフトアップされた4WD車が何台も止まっており、ラフな格好のオジさんたちが噛みタバコをクチャクチャやりながら笑っている。そんな中、先述した子ブタの作業は3人で担当。一人が熱湯をかけ、一人がナイフで毛を剃っていくのだが手慣れたもの。お湯がなくなると、もうひとりがお湯を汲みに行く。時間が経つにつれてどんどん子ブタの白い皮があらわれていくのだが、手際が良くて感心してしまう。見た目は子ブタなのだが、感覚としてはすでにウマそうなお肉なので不思議なものだ。
闘鶏用のオスは、それぞれ三角の屋根を持つ一軒家?に紐でつながれている。メスは高床式の集団アパート?のような巣に入れられているのだが、このニワトリ小屋がなかなか可愛らしい。この日は闘鶏が休みだったが、みなさんの中でもとくに貫禄のあるオジさんが自分の軍鶏が戦う様子を実演してくれた。ナイフこそつけていないが、二匹の軍鶏を近づけるとバサバサと相手に襲いかかる。この闘鶏での収益は一部を福祉に寄付するために開催されることもあるのだそうだ。
HUNT印のロタ島オススメスポットナンバー1は、じつはこの闘鶏場であった。



ロタの魅力にとりつかれて移住! -ブルーパームス、高久さんの笑顔に痺れる-

ロタブルーと呼ばれる紺碧の美しい海の色。海の透明度は冬で50〜70mと世界トップレベルで、この美しさに魅了されるダイバーたちも多い。神秘的な光が差し込むロタホールや沈没船の松運丸などなど、数多くのダイビングスポットは何度来ても飽きない魅力があるという。今回お世話になったロタ島のダイビングショップ、ブルーパームスの高久さんは、島の海に魅せられて移住。ロタ島の海や自然、人々の素晴らしさを訪れる方に伝えている。
美しい海と色とりどりの魚は、シュノーケリングでも楽しむことができるが、一緒にトライしたいのがトローリング。ルアーをつけたトローリングロッドからラインをのばし、鳥山をめがけ船を走らせればすぐにアタリが!ラインが長く引きもあるので、なかなか魚は上がってこないが、ご覧のようなシイラ(マヒマヒ)やカツオ、サワラが釣れる。詳しくは本誌付録の小冊子を見ていただきたいが、釣った魚は村のレストランでさばいてくれるため、旅行先で『とって食べる』を満喫することができる。ロタ島のネイティブをチャモロと呼ぶが、彼らの料理(チャモロ料理)にはケラゲンというレモン果汁を使った料理があり、暑いロタではビールのお供に最高!チキンもマヒマヒのお刺身も、岩で捕まえたカニも、ケラゲンにすると抜群。食材にレモン果汁と塩、ねぎ、唐辛子を混ぜるだけなので簡単だ。





ジャングルでシカ撃って、カニ採って! -名物警察署長さん親子とハントな1日-

そして、ロタ島で夜な夜な行われているのが、ココナッツクラブハンティング。用意するのはよく熟れたココナッツ。この中央にナタで切り込みを入れ、ジャングルに仕掛けておくとあら不思議!次の夜に見てみると、大きなヤシガニがココナッツにしがみついて、切り込みからココナッツをチューチュー吸っているではあーりませんか!しかしこれ、かなりデカイ。足を含めて大人用の野球グローブくらいの大きさ。しかも色がエヴァ初号機のようでイカつく、ハサミもかなり巨大で一瞬たじろいでしまう。これをムンズと掴むのにはかなり勇気が必要だが、島民はさっさと背中をつかみ、あらかじめ用意しておいたゴムでハサミごとぐるぐる巻きに固定する。雑食性のココナッツクラブはそのまま食べると臭みがあるので、何日か水槽でココナッツだけを食べさせるのが美味しく食べるコツなのだそうだ。
そのほか、ジャングルには鹿も多く生息するので、鹿狩りも盛ん。ほとんど道もない藪をトラックで進み、小高い丘へ。茂みに身を隠して獲物が来るのを待つのである。『とって食べる』のが当たり前のロタの暮らし。動物性たんばく質も自分でなんとかするのが基本である。



シカを獲ったら、シカ肉パーティ -アーティスト、ケビン・アタリグさん家で飲めや歌え-

ロタ島のジャングルにいる野生の鹿は、味も絶品!「今夜、家で鹿肉パーティをするから、よかったらおいでよ!」というのは、ロタ島のミュージシャン、ケビン・アタリグさん。マリアナの自然やカルチャー、伝統を軽快なテンポで歌い大ヒットしたチャモロミュージック(YouTubeでChamorro Music-Kevin Atalig-DUIをチェック)は彼の作品である。ケビンさんは、歌もうまいが、釣りと狩りの名人。そして奥さんのサンドラさんはマリアナ政府観光局で日々ロタの魅力を発信しつづけており、チャモロ料理の達人だ。
親戚や友人を招いてのホームパーティは、鹿肉のスープに、鹿頭の煮込み、鹿の生レバーのケラゲンなどなど、狩りで獲った獲物でしか味わえない料理がズラリと並び、どれも絶品。家の前にテントと机を並べ、子供達がはしゃぎ、オジさんが歌い女の人が笑う。そして、誰かがギターを持って常に歌っている。どこか懐かしく人間的で素朴なスタイル。そんな素晴らしい夜であった。







なんでも治すチャモロメディスン -エリザベスおばちゃん直伝、野草で薬を作りましょう-

次の日は、サンドラさんのお姉さんの家へ。彼女はチャモロメディスンという、自然の草花を使った伝統的な民間療法の達人なのである。ロタ島にはノニなど薬効の高い植物が自生しているが、そうしたメディカルハーブは、彼女の組み合わせ次第でさまざまな薬に変身する。さっそく気管支に効くというハーブティーをご馳走になったが、とくに苦いということもなくとても飲みやすい。また、彼女の旦那さんが同行したスタッフの足を見るなり「その傷はどうしたんだ?」と座るように指示。足に手を当てて目をつむり、時折息を吹きかけるという事態に!なんでも彼はおじいさんの代からのヒーラーで、傷に霊的なものを感じたのだそうだ。診断結果はとくになんでもなかったのだが、霊的なパワーや自然の力を取り入れての生活にもロタの伝統が根付いているのである。
HUNT vol.11






取材協力:マリアナ政府観光局
http://japan.mymarianas.com/rota
text&photo:Soichi Kageyama