MOBILITY

2020.06.03

「ヴィンテージ」と「キャルルック」VWビートル、2つの楽しみ方を1/24モデルで表現!

VOLKSWAGEN TYPE 1 Cal Look



子供の頃、当時はカブトムシとかワーゲンだとか呼んでいたVWタイプ1をカッコいいと思ったことは一度もなかった。私が幼少期を過ごした1970~1980年代初頭に街で見かけるタイプ1の大半は1970年代後半のビッグバンパー、ビッグテールのいわゆるレイトモデルで、ダブルバンパーを備えた1960年代の古い個体に出くわす機会はすでに皆無だった。イマイが当時1303のセダンやカブリオレのプラモデルを出したのも、それが当時一番見かけるタイプ1だったという理由ではないかと思う。そんな私のタイプ1観が変化しはじめたのは1980年代後半、アメリカのカスタムカー文化が雑誌などで盛んに採り上げられるようになり、キャルルックという言葉を認識したあたりからである。

’70s、西海岸、ハワイアンなどカスタムの楽しみ方も多様
 
ちょっとだけトーションバーをひねって車高を落として、派手なボディカラーに塗り替えて、流行りのムーンディスクとなんちゃってホワイトウォールタイヤ(ビードに耳を落とし込んでサイドウォールに貼りこめるビニール製のホワイトウォールがあったのだ)、管楽器のようなメッキのクワイエットマフラーで決めればキャルルック、そんな時代があった。あるいはビッグバンパー時代のモデルに6V電装時代の’60年代のダブルバンパーやヘッドライト、テールライトなどを移植して“古っぽく”見せる“6化け(6V電装時代のモデルに化ける)なんてスタイルも流行った。それでもあのファンシーな印象のワーゲンがこんなにもカッコよくなるのか! といたく感動したものだった。

フォルクスワーゲン タイプ1 キャルルック or ファクトリーストック
 
その後、アメリカのカスタムカー文化の情報がリアルタイムで入手できるようになると、日本のVWカスタムシーンは急速にレベルアップしていく。ムーンディスクを履いて車高を落とせばキャルルックという時代はあっという間に過ぎ去り、元来凝り性な日本人らしく、やれこれはリアル’70sスタイルだとか、西海岸ノリだとか、ハワイ風だとかマニアックな方向に突き進んでいく。
 
一方で、1950~1960年代の古いタイプ1をとことんオリジナルに戻して乗ろうというヴィンテージ派も増えて、1990年代初頭には日本の空冷VWシーンはカスタム派とオリジナル派に大別されるようになった。そんな時代に本誌10号、『VOLKSWAGEN』特集号が発売となった。すでに当時の私はオリジナルのヴィンテージ派に宗旨替えしており、スプリットやオーバル、ヘブミューラーといった量産初期のタイプ1のオーセンティックなカッコ良さに心酔していた。
 
グンゼのオーバルのキットは当初、今で言うマルチマテリアル・キットフォーマットのハイテックモデルシリーズから発売され、後に完全プラキットの廉価版もリリースされたが、廉価版と言えども定価900円ほどしたので手が出ず、何とか手に入れたエルエスのスプリットウィンドウを、本誌10号に掲載された、あつたゆきお氏作の漆黒のグンゼ製オーバルの雰囲気に近づけようと、必死で作りこんでみたりした。

ボディはストックにこだわり、車高とホイールで今風に仕上げる
 
そしてあれから30年である。私は当時憧れたグンゼのオーバル(廉価版の方だが)を作ることにした。完全なファクトリーストックも良いなと思ったが、どうせなら私がワーゲンを好きになった、ふたつのキーワード、「キャルルック」と「ヴィンテージ」を兼ね備えた仕様が望ましく思え、締め切りの合間を縫って正味6日間ほどで、理想の1台を完成させることが出来た。ボディ自体はとことんファクトリーストックにこだわり、車高とホイールで今どきのキャルルックを目指す。そんなスタイルである。
 
 実は私はプラモデルを作るのは好きだが、完成させるとどうでもよくなってしまうタイプ。そのため完成したものを眺めてニヤニヤすることは滅多にないのだが、今回のオーバルはすでに完成させてから1週間ほどが経過した今もオフィスのデスクの上に置いて眺めたりしている。挙句の果てに、先日もフリマアプリでもうひとつグンゼのオーバルを入手して、1952年型のスプリットウィンドウに改造してやろうなどと息巻いているところだ。そう、今回の特集タイトルにもあるように、やっぱり空冷フォルクスワーゲンは楽しいのである。

作例制作&文:鵜飼 誠 写真:服部佳弘

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