MOBILITY

2019.01.07

いつまでもローカルたちのために。「Brixton Cycles」

「ローカルたちは、俺らを頼りにしているんだ」


ロンドンを代表するパーク、ストックウェル・スケートパークがショップのすぐ隣に位置することもあり、同店のスタッフも暇を見つけてはパークで自らのスキルを磨いている。


スケートパークが併設するショップならではの、コミカルな看板。スケーターとサイクリスト、お互いが譲り合いながらローカルパークを楽しみ、そして維持することが求められているのだ。

 サウスロンドンはBrixton。ジャマイカ系やアフリカ系の移民が数多く住み、ひと昔前ではドラックディーラーが生息するゲットーな街として知られた街である。現在では以前に比べてだいぶ治安も改善されたというが、街のいたる壁で数多くのタギングを見ることができ、ダークシティの面影はいまだ色褪せていない。けれども、何かの拍子でローカルたちとコミュニケーションが始まれば、みな一様にジェントル。郷に入れば郷に従え。という古くからのことわざがあるが、ルールに反したことさえ起こさなければ、ほとんどのローカルが温かい目を向けてくれる。

 そんなBrixtonには街の名前をそのまま冠したBrixton Cyclesというショップがある。オープンは今を遡ること約30年前の1983年。創設当時からこれまでずっと地元のサイクリストたちをサポートしてきた、ローカルによるローカルのための老舗自転車屋なのである。そして、ショップに足を踏み入れれば、モノ、モノ、モノ!! FIXEDにロード、BMX、MTB、パーツやアパレル。同店のラインナップの広さはとにかく尋常じゃない。それもそのはず、Brixtonに住むあらゆるローカル・サイクリストのニーズを、全てカバーしなければならないのだから。

 「俺らは自転車に関するモノなら何でも扱うんだよ。アレはやらない、コレはやるなんてセレクトなんてしてられないんだ。だってそうだろ、ローカルたちは俺らを頼りにしているんだから。彼らの要求にはすべて応えたいと思っているんだよ」

 そう答えるのは、同店でスタッフとして働くジャマイカンのLincoln。自慢のドレッドを揺らし、ジョークを交えながら、こちらの質問に丁寧に答えてくれる。なるほど、ともすればローカルに根付くというのは、こういうことをいうのだろうか——。

 そんなふうにLincolnと話していると、Brixton Cyclesのすぐ脇にあるストックウェル・スケートパークから聞こえてくる「Hey, Lincoln!!」の声。どうやらパークでセッションをするローカルたちに呼ばれているようだ。そして彼は「続きはまた後で(笑)」と言い残すとBMXにまたがり、パークへと向っていった——。

 Respect & Support your Local!!


Brixton Cycles店内。ご覧のとおりフレーム、パーツ、アパレルなどショップはモノで溢れている。写真ではわかりにくいが、同店ではローカルのニーズに応えてスケートボードのアイテムも扱っている。


Lincoln Romain/
同店の顔ともいえるドレッドヘアが特徴のLincoln。BMXをパークでも駆るが、最近はSURLYの1×1で泥遊びをするのが愉しいのだとか。シンプルなブラックで統一された彼のバイクには、使いこまれた美しさがある。またボブ・マーリーを意識!? アディダスのジャージにシューズとファッションセンスもピカイチだ。


Jim Hill Billy/
赤毛のヒゲをたくわえたBillyの愛車は、イギリスでも大人気のFUJI TRACK PRO。ストック然とした雰囲気だが、中でもMICHEのチェーンリングはBillyこだわりのパーツなのだとか。フレームにかけられた"06"のナンバーは、本人もよくわからないが付けているとのこと。そんな適当な感覚がなんとも欧米的といえるかもしれない……。


Playground for Locals


メンテナンスルームの壁には、整備に必要な工具が美しく並べられている。そして工具の戻す位置がわかるようにマジックで絵型が。Brick Laneでも見たが、イギリスでは主流の方式なのかもしれない。


Brixton Cyclesの隣にあるストックウェル・スケートパークは、ロンドンを代表するスポット。広大な敷地にはボウルも用意されている。この日は平日とあって、ローカルだけが遊んでいた。


パークでコミュニケーションを図るローカルたち。そこは情報交換の場としても活用されている。またご覧のとおりパークの塀一面にはタギングが。Brixtonらしい光景のひとつだろう。


Billy Prendergast/
Brixtonをホームとするロンドンのローカル・バイシクルブランドEMER。同ブランドの24インチSWIFTのプロトタイプと映るのはBrixton CyclesのスタッフであるBillyだ。彼はEMERのライダーも務め、日夜ストックウェル・スケートパークでスキルを磨いている。

カメラ:Soichi KAGEYAMA
テキスト:Kota ENGAKU
媒体:PEDALSPEED UK

陰山惣一

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