中軽井沢駅から車で5分ほどの距離にあるこの場所。表通りを折れて少し砂利の多い道を進むと、見えてくる建物が「Coffee House Shaker」だ。白い外装に、ジューンベリーの白い花がよく合う。
「軽井沢 五街道」の一つ、中山道上に位置する宿場町として江戸時代に栄えたその町は、現在でもかつての面影を残す場所が点在している。人気のリゾート地として有名だが、四方は自然に囲まれており、レジャー・キャンプ等にも適している場所だ。
新幹線で都内から軽井沢に向かい、トランジット。中軽井沢駅からほど近い場所に黒澤さんのお店「Coffee House Shaker」がある。店の名前にもなっている"シェーカー"だが、これはアーリー・アメリカン・スタイルの一つである、"シェーカースタイル"から取られている。
シェーカースタイルとは、18世紀後半から19 世紀の間、自然の中で自給自足のコミューンを形成していた、ピューリタンの一派の生活スタイルだ。このスタイルの特徴である、チェアやほうきなどを壁にかけるために取り付けられたペグボードは、機能美を備える。このように実務的でありながら、現代にも通用するモダンで美しい空間を形成するスタイルなのだ。
店舗は白を基調に統一され、店の周りは春に一足遅れて花咲くジューン・ベリーやモミの木で囲まれ、程よい木漏れ日を地面に落とす。どちらの木もこのお店をオープンした当初に植えたもので、日々を共に過ごした仲間。季節にもよるが、ジューン・ベリーの木に生った実から作られるジャムも、メニューの中に並ぶのである。
普段お客さんが来ない間は庭にイスを出して、庭に貼られた黄色いタープの下で本を読むなどスローなペースで過ごし、そこに友人が集まるとランタンを出して微かな明かりの下で、夜のバーベキューを楽しむ。軽井沢の夜の澄んだ空気の中に笑い声が響く――そんなイメージを想像してほしい。まるで小説の中のような素敵な日々がこの場所では流れているのだ。
店内の家具はシェーカー・ジャパンで販売されているキットを購入し、自身で製作した物。シンプルナチュラルな内装の中に何気なく置かれている小物類や、ペグボードにかけられた絵にもグっとくる。取材時にはちょうど友人の絵の個展を行っていて、可愛らしい絵が並べられていた。そんな自然な流れで置かれた絵の数々も、この緩やかな時が流れる空間を形成することに一役買っている。
店内に招き入れられ、我々が諸所に見惚れているうちに、オリジナルブレンドのコーヒーを淹れてくれた。ミルもカリタ社の古いタイプのもので、器具や食器類には経年変化だけが出せる雰囲気が漂う。仄かに香る木の匂いの中でいただくコーヒーは、まるで前時代。現代社会ではなかなか出会うことの出来ない、どこか懐かしい気持ちにさせてくれる。
14年前にオープンしたこのお店は、香りのよいオリジナルブレンドのコーヒーのほか、ホームメイドのバナナケーキやホットサンドも人気だ。
使い込まれた道具や家具とともに、シェーカーのインテリアも並ぶ。クラシックとモダンの不思議な共生によって、この空間は成り立っている。
毛バリを編む際に使う道具。数種類のウールを編み込むことでカラーのパターンを作り出し、魚が本物と見間違えるように作り上げる。
黒澤さんのフライ・フィッシングのキャリアは小学校時代から始まり、現在に至るまで約30年にも及ぶ。釣りそのものに興味を持ったきっかけは、漫画『釣りキチ三平』で、主人公が魚を見事に釣り上げる姿だった。
フライに少しでも関心がある皆様なら、田渕義雄氏著訳の『フライ・フィッシング教書』を耳にしたことがあるはずだ。そんなバイブルともいえる一冊を黒澤さんが手にしたのは、中学生の時。高校時代には氏に憧れ、パックロッドを背負って登校。下校のチャイムが釣り開始の合図だった。
黒澤さんが操る"Shaker Rod"は彼のオリジナルロッド。既製品のバリュエーションが多い現代では自作の道具は縁遠いが、一昔前の、殊にアウトドアでは、どんな道具でも一手間加えたものだ。
黒澤さんの所有する道具の多くに共通していることは、購入したモノを使い続けていたら、いつの間にかヴィンテージになっていたということだ。インターネットで何かを購入しても手元に残らないが、若いころに釣り場で知り合った人から譲り受けたモノはなぜかずっと持ち続けているという。
この謎を解く答えは「思い入れ」の一言に尽きる。長年の間、一緒に経験を積んだ道具は、それとなく持ち主に馴染んでくる。そういうモノこそカッコいいのだ。
フィルソンのフィッシングベストも使い込まれている年代物だ。ランディングネットは、ネット業者を営む友人に頼んで作ってもらったもの。
このロッドは黒澤さんが自身で作る"ShakerRod"だ。ペースが速いときは、1か月で2本を作り上げるという。使用する竹は日本のものだと柔らかすぎるので、中国から輸入しているという。普段使うものだからこそ、自分の手で作るという言葉に説得力がある。
これらのリールはどちらも1970年代のヴィンテージで、白いモノがイギリスのハーディ、黒い方がアメリカのオービスのモノだ。どちらも相当に古いモノだが、ヴィンテージ品として買ったのではなく、現行品として手に入れたモノが使い続けているうちにヴィンテージになったという。もはや自分の手であり、足でもあるのだろう。
カメラ:Soichi Kageyama
テキスト:Ryoma Watanabe
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