ニューヨークの通称といえば「ビッグ・アップル」。この名の由来は、大恐慌が起こった時に失業者がリンゴを売っていたからという説、ジャズマンがアメリカ北部の都市をアップルと呼んでいて、ニューヨークがそのメッカということでビッグ・アップルと呼ばれたという説、19世紀、社交界の集まりにやってくる女性のことを男性がアップルと呼んでいて、素敵な女性が沢山集まるからという説、競馬用語だったという説……と、とにかく沢山の謂れがある。
どれが本当なのかその真相は明らかになっていないけれど、数ある噂の中でも"アダムとイブ"のリンゴ、つまりニューヨークは禁断の果実という説には素直に共感を覚える。経済と文化が発達してきたニューヨークには、人々を魅了する物事が数多あるのは間違いない。
今回はそのビッグ・アップルに店を構えるトラッドなショップを2店、ご紹介。伝統やら文化という言葉が大好きなオヤジにとって、これから紹介するショップは、さながら禁断の果樹園。もうすでに感度の高い日本人は注目し始めているというので、読者諸兄も要チェックだ。
ジ・アーモリーは2010年に香港で創業した、気鋭のメンズ・クロージングショップ。クラシックスタイルを提案する新しい店として世界からの注目度も高く、現在は香港に2店舗と、ここニューヨーク・トライベッカに1店舗を構えている。
クラシックといっても、彼らの店は1つのスタイルにとらわれていないのが特長で、サビルロウのブリティッシュスタイル、イタリア・フィレンツェのクラシコイタリアやナポリ仕立て、アメリカン・トラディッショナルなど、様々な様式を取り入れて商品展開している。
ジ・アーモリーの独自路線"インターナショナル・クラシック"の根幹にあるのは、それぞれのスタイルに対する情熱と、それぞれに培われてきた技術を持つ職人たちへのリスペクト。ブランド名だけが先行した無意味な洋服でなく、熟練の職人が丹精込めて作った洋服だけを、世界中からセレクトして販売しているのだ。
良いものは時代を超越して古びない。その信念があるからこそ、伝統と格式を重んじながらも、良いものは取り入れていくという同店の姿勢ができ、基盤を作り上げているというわけなのだ。だからスペインのものでもオーストラリアのものでも、日本のものでも、良いと思ったものは取り入れる。特に技術面では日本にアンテナを張っていて、定期的にショップでビスポーク靴職人の鈴木幸次氏や福田洋平氏を招き、受注会を行っているという。
人種のサラダボウルともいわれるほど多様な人種が暮らし、独特な個性を持っている人がたくさんいるニューヨークという街。アーモリーはどのスタイルが一番よいと決めつけるわけでなく、多様な選択肢の中から、お客の個性に合わせたひと品や着こなしへと導いてくれる。
【Information】
The Armoury Tribeca
Address:168 Duane Street, New York, NY U.S.A.
営業時間:11:00〜19:00(月曜〜土曜)、12:00〜18:00(日曜)
https://thearmoury.com/
アイビーファッションにおいてのブレザーとは、20世紀半ばにアメリカのアイビーリーガーたちが着たジャケットのこと。日本では1960年代VANに端を発してアイビーブームが起こり、段返りの3つ釦ブレザーがアイビージャケットとして認知され、以降もアメトラの定番アイテムとなっている。
さてそんなブレザーであるが、元を正すと起源が19世紀のイギリスにあるのをご存知だろうか。もちろんアメリカの服装文化はヨーロッパから来ているので察しはつくだろうが、元々はスポーツウェアだったことは意外と知られていない。
ブレザーが世に知られるようになったのは19世紀半ば、当時ロンドンを流れるテムズ川にてケンブリッジ大学対オックスフォード大学のレガッタボートレースでの事。その大会の時にケンブリッジ大学のクラブチームが着ていた、母校のカレッジカラーであるスカーレッド色のジャケット。これが水面に反射して炎(Blaze)のように見えたことから、この手のスポーツジャケットがブレザーと呼ばれるようになった。これがクールだと評判になり、スポーツクラブや学校、企業の制服としてブレザーの用途が広がっていったのだという。
その後しばらく経って1960年代のアイビーブームも過ぎて、平成も30年を経過した現在。日本では、ブレザーは学生や年季の入ったおじさんが着るもの、というイメージを持つ人も少なくない。しかし近年、大手セレクトショップがとあるブランドのブレザーを取り扱い始め、半世紀ぶりにブレザーに光が当たっている。
そのブランドとは、2017年にニューヨークで誕生したローイング・ブレザーズ。ローイングはボート競技のことで、そのブランド名通り、彼らがフィーチャーしているのはボート競技の選手が着ていたブレザーだ。
ブランドを立ち上げたジャック・カールソン氏は、アメリカ生まれ。イギリスのオックスフォード大学に入学し、本場の名門レガッタクラブで、アメリカ人ながらトップ選手として活躍。イギリス王室主催のレガッタの世界大会でも、チームを優勝に導いたこともあるハンサムガイ。それでいながら考古学の博士号も持ち、2014年にはブレザーの歴史についてまとめた本を出版したことで、現在におけるブレザー業界の第一人者ともいわれている。
「The Rowing Blazers Clubhouse」は、SOHOで営業しているローイング・ブレザーズのポップアップショプ。今年の夏より3か月限定での出店予定だったのだが、好評につき今も営業を続けている。
ショップのインテリアはクラブハウスをモチーフにしており、ボートの道具や写真、絵を収めたフレームなどが飾られ、所々に遊び道具も置かれている。我々の感覚だとどうしても、ブレザーはキレイ目な格好をして着るものという感覚だけれど、彼らはもっとカジュアルに着るよう提案している。ブレザーは今でいうパーカーやジャージのように、スポーツマンが気軽に着ていたもので、必ずしもシャツを着て着なければならないというものでもないらしい。
彼らのブレザーはニューヨークでハンドテーラリングされていて、当然ディティールに並々ならぬ拘りがある。基本的には3つのパッチポケット、ノーベント、ノーライニング、メタル釦、七宝焼のフォブやラペルピンが付いた昔ながらの仕様で、ヴィンテージをモチーフにしたアイテムには、何代も受け継がれて着古され、何度もパッチを付け直したような加工が施されたものも。素材や生地も伝統的なものを使うことで、ブレザーが歩んできた歴史に敬意を表しているのである。
また、ブレザーの文化を掘り起こした事と同時に、今のファッションシーンにブレザーを取り入れ、アイビーを再提案した事も、ローイングブレザーズの大きな功績だ。
主力アイテムであるブレザーのほかウールタイ、オックスフォードシャツやラガーシャツ、Tシャツ、トラウザーズなど、ブレザーと合わせられるカジュアルなアイテムを展開。それぞれ刺繍されたモチーフやプリントされた文字にも意味があり、それを紐解くというのも面白い。
全てアメリカ製という生産背景にも、そのアイテムに込められたバックボーンにも哲学があるというのは、オタク気質な我々日本人の心に響くものがある。
仮に期間限定のポップアップに行けずとも、ローイング・ブレザーズの今後の動きは要チェックだ。
【Information】
The Rowing Blazers Clubhouse
Address:161 Grand Street, Soho, NY U.S.A.
営業時間:10:00〜19:00(月曜、水曜、木曜)、11:00〜20:00(金曜、土曜)、12:00〜18:00(日曜)、火曜定休
https://rowingblazers.com/
最後に、ジャックがほぼ晩通っているというエドワーズをご紹介。
場所は、彼のショップとオフィスからもほど近いトライベッカ地区。アール・デコ調のインテリアが目を引く同店は、ハンバーガーを食らい、ビールを飲む、いわゆる正統派アメリカンダイナーである。
そんなクラシックな雰囲気のエドワーズのメニューの中でも、ジャックが特に心酔しているのは、彼曰く"アメリカで一番美味しいチーズサンド"。
学生時代レガッタ競技のチャンピオンに輝き、アメリカでも選手として活躍していたジャックに「さすがに毎晩チーズサンドを食べていたら太ってきちゃった。それでも食べるけどね」と言わしめた逸品、どうぞご賞味あれ。
【Information】
Edward's Restaurant
Address:136 W Broadway, New York, NY U.S.A.
営業時間:9:00〜10:30
http://www.edwardsnyc.com/
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