電動自動車によるモータースポーツ、「フォーミュラE」がスタートして3ヶ月が経過した。開幕戦はBMWアンドレッティのアントニオ・フェリックス・ダ・コスタが勝利を飾ったことで、今期新加入のチームがいきなり優勝をさらっていった……といった報道もチラホラあったが、元はといえばアンドレッティ・フォーミュラEという老舗チームにBMWワークスが乗っかったという話。ニッサンの新規加入も同様で、プロストがオーナーを務めたルノーe.ダムスという名門にニッサンの名前が加わったわけで、現場に日本人スタッフの姿はない。パナソニック・ジャガーやDSテチータもまたしかりである。
つまり、今期速さを発揮しているチームは、まだフォーミュラEが海のモノとも山の……などと後ろ指を指されていた時代から、本気で取り組んできた愛すべきモータースポーツ野郎たちばかりなのだ。シリーズが産声を上げた5年前の、EVが置かれていた状況を考えると、その先見の明には驚かされるばかりである。
そして、来季の2019/2020シーズンからは、ポルシェとメルセデスもワークス活動を開始する予定であると発表しているが、今期から参戦を開始しているHWAレースラボは、メルセデスのレース部門そのもの。マクラーレンで冷や飯を食っていた元F1ドライバーのストフェル・バンドーンがメルセデスF1のシミュレーターも兼任しているのも周知の事実である。つまり、メルセデスを名乗る限り、無様な姿は見せられない……という不退転の意気込みで、フォーミュラEに臨んでいるのだ。今期は様々なテストを行う予定だということが、レースラボ(レース研究所)というチーム名につながっているのだろう。
名門チームとタッグを組んで。
自分たちのレース部門を、まずは“ラボ”として投入して。
モータースポーツに取り組んでいる自動車メーカーにとって、フォーミュラEを無視することはできない。それが、2019年の事実なのである。
実際、ジェネレーション2が投入された今期の前半戦は、さらに激しい競争が繰り広げれている。いきなりオープニングゲームを獲ったダ・コスタ(BMWアンドレッティ)にベテランのダンブロシオ(マヒンドラ)、暴れん坊キャラのバード(エンヴィジョンバージン)、元チャンピオンのグラッシ(アウディスポーツ)、そして繰り上げではあったが初優勝を手にしたフレッシュなモルタラ(ヴェンチュリ)など、個性的なドライバーが活躍している。
なにしろ、二度以上勝った者やチームがいないということに注目していただきたい。一部の強豪チームだけに勝つ権利があるというワケではない。誰が勝つかわからないという興奮に満ちているのである。しかも、優勝を逃しているドライバーの中には、かのフェリペ・マッサもいるという贅沢感。必ずや、シーズンのどこかで優勝にからみ、バトルを今以上に盛り上げてくれる期待感大なのである。
下克上有りのフォーミュラE戦国時代。新時代の幕開けとなるかもしれない今期、前半5戦を振り返ろう。
開幕戦を迎えたフォーミュラE。ポールポジションを獲得したのはBMWのダ・コスタ。一番時計を叩き出していた公式テストから、好調を持続していたといえる。決勝でもホールショットを決めたダ・コスタだったが、 明らかに速かったのはDSテチータ。ベルニュとロッテラーがダ・コスタの背後で2位、3位の背後でプレッシャーをかけまくる。14 周めにベルニュがトップに立ち、ロッテラーも程なくして2位に浮上。
無敵のワンツー体勢が完成か……と思いきや、テクニカルな違反があったとしてまさかのドライブスルーペナルティがDSテチータの2 台に課されて後退。なんとか逃げ切ったダ・コスタが開幕戦を征し、BMWに記念すべき初勝利を献上した。
マラケシュの予選を制したのはヴァージンのバード。だが、決勝スタート直後の第1コーナーで、DSテチータのベルニュにインへ飛び込まれて接触。なんとか首位をキープしたが、開幕勝利のBMWの2台に追い立てられて陥落した。接触でダメージを負っていたのか、その後もペースは上がらずにジリジリと後退する。
トップを堅守したBMWだったが、26周目にダ・コスタとシムズがバトルを開始。なんとダ・コスタはウォールの餌食に。ペースダウンを余儀なくされたシムスも4位に後退してしまう。この間、後方から脅威のハイペースでポジションアップを果たしたのは、DSテチータの2台だったが、トップには及ばず。マヒンドラのダンブロジオが混乱の第2戦を制した。
開幕以来、多くのチームがペナルティに見舞われているが、サンティアゴではアウディがその餌食に。予選で他を圧倒する走りを見せたグラッシが、ペナルティでノータイム。最後尾スタートという悪夢に。代わりにポールを獲得したのはブエミ。これが、ニッサン初となるFE予選制覇となった。
決勝では、ブエミとマヒンドラのウェーレインがレースをリード。その背後からバードが襲いかかり、11周目にアタックモードでウェーレインを追い抜いた直後にイエローでレースが中断。再開後のバトルで、ブエミが痛恨のミスを犯し、マシンを傷めてバードがトップチェッカーを受けた。レース後に重量規定違反の嫌疑がバードにかけられるも、翌日には無罪が確定して初優勝が確定した。
第4戦メキシコシティは、マヒンドラのウェーレインによるホールショットでレーススタート。2番手ニッサンのローランドと3番手アウディのグラッシを引き連れる展開となった序盤戦だが、早くも3周目に事故発生。ジャガーのピケ・ジュニアが、DSテチータのベルニュとBMWのシムスを巻き込んだ大クラッシュを引き起こしてしまう。
はたして赤旗中断後は、各車厳しい電費争いに。アタックモードを使用するタイミングも含め、バッテリー残量を計算しつつのレース展開は、ラストラップでニッサン2台がまさかの電池切れ。チェッカー目前にしてストップする結果に。トップだったウェーレインも、最終コーナーでバッテリーが切れてしまい、グラッシがゴールライン直前で劇的な逆転勝利を収めた。
第5戦香港の予選。ウェットでHWA勢が速さを見せ、バンドーンが初ポールを獲得。雨上がりの決勝では、予選2番手だったニッサンのローランドが好スタートでトップに浮上する。だが、7周目でスローダウン、DSテチータのロッテラーにあっさりと首位を明け渡す。レース終盤は、ロッテラーと2位ヴァージンの一騎打ち。
バッテリーが残り少ないロッテラーがバードのアタックをいなしながらレースは残り2分。業を煮やしたバードが、コーナー入り口でロッテラーを後ろからハードヒット。タイヤがパンクしたロッテラーの代わりに、バードがチェッカーフラッグを受けた。審議対象のまま表彰台に上がったが笑顔はなく、翌日に優勝は取り消された。結果として、ヴェンチュリのモルタナが初優勝を収めている。
Photograph:LAT/Formula E
Text:Yoshiro Yamada
媒体:『E MAGAZINE』 Vol.2
希少!「カレラGT」に「ポルシェトラクター」も。レストラン、ディーラー ...
2021.01.26
タイ、バンコク市内からクルマで約20分。クルマ好きを虜にするニューコンセプトのショップ「25G」が話題となっている。構想に4年をかけたというこの施設はクルマ好きにとっては憧れのスペースであるとともに、 ...
子供の生活を考えリフォーム! 北欧ヴィンテージ家具と暖炉、アートも生活 ...
2021.02.01
結婚し、長男が生まれるのを機に、実家の2階をリフォーム。二世帯での暮らしを始めたIさんご一家。「子どもと一緒にゆったりできるようにしたい」と、壁を取り払い、LDKを広くひと続きにリフォームしたといいま ...
幻っ!? 「ハコスカGT-R」のピックアップ! しかもハイリフト仕様を ...
2021.01.30
1968年にデビューした3代目スカイライン、通称ハコスカ。ボディタイプは4ドアセダン、エステート、バンがラインナップされ、1970年にマイナーチェンジされ2ドアハードトップが追加。マイチェンと同時に直 ...