LIFE STYLE

2020.07.12

100年前のヒーロー「マルコム・キャンベル卿」は世界最速記録を持つ自動車ジャーナリスト

モータースポーツが現在よりももっと未開で、命に関わる危険と隣り合わせだった頃。そのドライバーたちは、ヒロイックなスーパ ーアイドルとして、大衆から熱狂的な支持を受けていた。中でも1920年代から60年代にかけて、全世界で盛んに繰り広げられたスピード記録チャレンジで世界公認記録を達成したドライバーには、国民的英雄としての栄誉が授けられることになったのだ。

今回ご紹介するマルコム・キャンベル卿は、そんな国民的ヒーローの最たるひとり。英国ケント州チズルハーストの裕福な宝石商の息子として生を受け、家業の継承を期待されたが、成長にしたがってモータースポーツへの情熱が目覚めてしまう。そして当時創成期にあった自動車メディアに寄稿しつつ、レース活動を開始。ブガッティとともに、GPレースで勝利を収めるまでに至った。

伝説の青い鳥とともに時速300マイルの壁を超える!

1933 Campbell-Railton Blue Bird キャンベル卿の速度記録車、ブルーバードの第5世代にして、最終進化形。「シュナイダーカップ」最後の勝者となったスーパーマリンS6Bと共通の、ロールス・ロイスR型エンジンを搭載。自動車史上初めて時速300マイルを超えるという偉業を達成した。

そんなキャンベルが最も情熱を燃やしたのが、世界速度記録。英国サンビーム社が製作した航空機エンジン搭載のレーシングカー「350Hp」に、メーテルリンクの戯曲「青い鳥」から採った「ブルーバード」と名づけ、1922年からチャレンジを開始。1925年には当時の記録挑戦者たちにとっての大きな目標だった時速150マイル超えを達成した。

その後、自らも設計に参画したシャシーに、ネイピア社製ないしはロールス・ロイス社製航空機エンジンを搭載した、一連の「ブル ーバード」を相次いで製作。1935年9月3日にはその最終進化形、 2300psを発生するR-R製「R」型V12ユニットを搭載した「キャンベル-レイルトン・ブルーバード」とともにユタ州ボンネビルに乗り込み、史上初めて時速300マイルの壁を超える 3 0 1 . 3 3 7 m p h 484.955km/h)を記録し、その名声を絶対的なものとしたのだ。  

さらに、彼のスピードへの情熱は水上にも及び、1939年8月には当時の水上速度記録、141.740 mph (228.108km/h)を樹立。そして、これらの偉業に先立つ1931年には、MBE(大英帝国勲章)を授けられた、名実ともに「スピ ードの騎士」。それがマルコム・キャンベル卿だったのである。

VINTAGE LIFE vol.22より掲載

Photo : ©Rolex Text : Hiromi Takeda

RECOMMENDED


RANKING