MOBILITY

2020.09.06

ポルシェ959の空力実験試作モデルC29をモデルカーで楽しむ! 質感表現と汚しの技法をご覧あれ

ポルシェ959 C29アエロディナミーク・シュトゥディ ◉タミヤ1/24 959改造 ◉作例制作:飯塚健一

トップ画像をご覧になって、ポルシェ959の廃車体でもモデリングしたのか、そもそも仕掛り品のまま掲載されているのか? そんな疑念を持った方もおられるかもしれない。このクルマはPORSCHE 959 C29 AERODYNAMIK STUDIE。その名称からも判る通り959の空力実験用スタディモデルで、造られたのは959の市販から遡ること4年、1982年のことであった。
 
現在はポルシェ・ミュージアムに展示され、その独特な姿から、“オッティファント”の綽名でも知られている。これはドイツのコメディアン、オットー・ヴァルケスの考案による、象のようなキャラクター(アニメやゲームに登場)の名だ。現在展示されているC92は実際に風洞実験に供されていたときとは細部が色々と異なるが、ここでは展示仕様のC92をタミヤの1/24 959のキットをベースに制作してみよう。

市販型959から時間を巻き戻す作業


 
このC29はボディ形状、アウトラインは、市販型959に踏襲されほぼそのままなので、模型での制作に当たって大きな改造は必要ないのだが、逆に、各部のアウトレットやダクト類、ボディと一体成型のライト類など、地味な加工が必要となる。市販型の959から時間を巻き戻す感覚だ。実車画像を参考に市販型との形状的な相違点を把握しながら、各部位の素材感の違いにも注目していく。この異素材の集合体で造られているボディは、以下の5種類のパートに分けることが出来る。
 
①ベースの911から流用されたと思われる、赤い鉄板の部分。
②樹脂成型と思われる、ボディの大部分を占めるアイボリー色の部分。
③サフェーサー仕上げと思しき、グレーのリアウイング。
④茶色いパテが大雑把に盛られた、リアフェンダー周辺。
⑤左リアフェンダーのみ存在する、ファイバー樹脂で固められている部分。
 
これら個々の素材が持つ雰囲気を強調する方向で、作業を進めていった。さらにタミヤ・ウェザリングマスターを使って、各素材特有の色味や、無造作についた汚れ等を全体的に表現していくが、今回は実物が存在する「正解」ありのウェザリングなのが難しいところ。ついつい楽しくなってクドくならないよう、自制心も必要だ。全体の色づけが完了したら、じかに書き込まれた寸法計測用の基準線や数値、イタズラ描きと思しきイラストなどを、極細の耐水性マーカーで、資料を参考に描き込む。この辺りもわざとらしくならないよう、注意が必要だ。
 
フロントは引っ込み気味、リアはツライチ



各所に貼られるテープを細切りデカールで再現し、最後にボディの赤い部分をマスキングして全体に水性半ツヤクリアーを吹き、全体の調子を整える。最終的に3000番のスポンジヤスリやメラミンスポンジで要所要所を擦って、クリアーのツヤではなく樹脂本来のテカリを出していった。
 
展示用に暫定的に取り付けられたと思しき、不思議なセッティングのBBSホイールとタイヤは、それぞれ別キットから流用加工した。スタッドボルトの孔を開口する際には、ポルシェ特有の大径PCD 130mmを意識して、大きめのピッチで開けて行くと雰囲気が伝わる。これらをフロントは引っ込み気味に、リアはツライチにと、実物通りに装着した。また、風洞実験を主目的とするこのクルマは、普通のクルマを「動」と表現するなら「静」であるので、動きのある姿勢は似合わないと感じ、フロントの舵取り機構はあえて接着した。
 
今回はボディ塗装の表現に、自分としては未知の材料を使ってトライしたのだが、ミリタリー系の作品では既に色々な塗料やコーティング剤を駆使した数多くの技法が存在し、その多彩な表現力に少々羨ましさも感じていた。下地処理して色を塗ってクリアーコートして研ぎ出す……カーモデルのこんなワンパターンな作業にちょっと飽きていたところもあり、今回の作例は少しだけ新しい世界を垣間見ることが出来て、とても楽しく制作作業が進められたことも、大きな収穫であった。 (飯塚健一)


リアフェンダーのFRP表現のため、まずきれいな面の型を「おゆまる」で取っておく。当該部分を切り抜き、「おゆまる」で取った型を隙間ができないようにハメて、裏から透明UVレジンを流して硬化させる。硬化したら型を外すと、透明樹脂がインサート成形された状態となる。ボディの樹脂部分の濃淡はウェザリングマスターで彩色。

modelcars vol.287 特集「とことんポルシェを楽しもう」

photo:Yoshihiro-HATTORI(服部佳洋) text:Masashi-HATA(秦 正史)、Makoto-UKAI(鵜飼 誠)

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