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2020.09.22

日産の新型EV「アリア」の小さすぎるパワートレイン! 軽自動車やリーフよりもモータールームはコンパクト!? 【Eマガジン】

日産の新型電動SUV「アリア」

日産が2021年中旬に発売するとしている電動SUV「アリア」のEVパワートレインを生み出したチーフ・パワートレイン・エンジニア、軍司憲一郎氏。アリアの情報を配信しているCLUB ARIYAのメルマガに、モーターの開発秘話やアリアの走りについて興味深いインタビユーが掲載されていたので、その内容をひもといてみよう。
 
「入社以来、ハイブリッドシステムの開発に携わってきました。自動車メーカーでパワートレインを担当しながら、エンジン開発をしたことがない珍しいタイプのエンジニアです(笑)」と語る軍司氏。開発過程ではキャビンを広くするため、パワートレインをギリギリまで小さくすることが求められたが、1ミリ単位のやりとりを何度も行い「日産リーフ」より小さい軽自動車並みのスペースにパワートレインユニットを組み込むことに成功したとしている。
 
世界に先駆けたEV「日産リーフ」を世に送り出し、e-POWERでモータードライブの裾野を広げるなど、EVに対する膨大な知見がある日産。開発にあたり「EVのプレミアムSUVを造る上でやるべきことは何か?」を軍司氏がパワートレインの立場から考えたとき、プレミアムカーの条件であるレスポンスの良さと滑らかな乗り味、静粛性を、EVのパワートレインでさらに上のステージに引き上げるという結論に達したという。
 
耳障りな音を抑える、電磁石を使用した新型モーター
 
吸気、圧縮、爆発、排気という工程がないEVは、走行中でも静かであることが大きな特徴だが、静かになると、逆にこれまで気づかなかった音が聞こえるようになる。その一つがモーターの回転音なのだが、リラックスしながらドライブをしている時に耳障りな音が聞こえるのは、プレミアムモデルにふさわしくない。ということでEVのパワートレインを根本から見直し、永久磁石の代わりに電磁石を使用する新しいモーターを開発した。
 
モーターは、内部のコイルに電気を流すと永久磁石が回転しトルク(駆動力)が発生する。クルマのような重いものを動かすためには、永久磁石を大きくして強いトルクを出す必要があるが、磁石が大きくなると抵抗が増え、モーターが出す音や振動も大きくなる。
 
「アリア」に搭載した新型モーターは、アクセルを踏み込んだ時は電磁石に多くの電流を流して大きな力を発生。街中や高速道路を巡航など大きな力を必要としないシーンでは、電流を少なくして振動を減らしているとのこと。走行シーンに応じてモーター内の電磁石に流す電力の量を変え、耳障りな音や振動を抑えることで、プレミアムな静粛性を実現している。
 
しかも、この電磁石を採用した新型モーターは、レアアースを一切使っていないとのこと。レアアースは世界的に需要が高まり、価格が高騰しているため、レアアースを使わず、製造原価も下げられた新型モーターは、今後EVの普及にも大きく貢献するのだそうだ。
 
日産リーフより小さい! 軽自動車並みのモータールーム
 
今回発表したアリアでは取り回しのしやすい全長を維持しながら広いキャビンそれを実現しているが、それはパワートレインを収めるスペースを小さくしたことによるもの。本来キャビンに配置される空調ユニットも、キャビンを広くするためモータールームに収めることになったということで、モーター向けのスペースはさらに狭くなったという。
 
電磁石を使った新型モーターを採用したため、高出力を維持しながら従来のモーターよりコンパクトにできたものの、このミッションは大きなチャレンジだったとのこと。結果として「日産 アリア」は「日産リーフ」より小さい、軽自動車並みのモータールームにパワートレインのユニットを組み込んだ。
 
軍司氏は商品開発の主管からこの話を聞いた時「勘弁してくれませんか」と正直に言ったとのこと。しかし、空調担当者とミリ単位の調整を繰り返し、時には協業、時には喧嘩をしながら、「あと1ミリずらせないか」というやりとりを何度も行い、小さなモータールームにすべてのユニットを収めることに成功したという。
 
居心地のよい部屋にいながら移動する感覚
 
軍司氏はメルマガの最後に「ひとりのエンジニアとして『日産アリア』は完成度の高いクルマに仕上がったと自負しています。皆さまに体験していただくまで、もう少しお時間をいただくことを心く感じますが、その時がきたら、ぜひ高速道路の夜景を楽しみながら、好きな音楽とか自分が聴きたい音だけに包まれて走ってほしいですね。圧倒的に静かなドライビングは、クルマという概念を超えて、居心地のいい部屋に居ながら移動しているようなプレミアムな体験になるはずです」と語っている。
 
これまで発売さていきた電気自動車のプレミアムSUVでも十分すぎるほど静かだとは思うが、このインタビューによると、アリアの静粛性はおそらくそれ以上なのかもしれない。今から発売がとても楽しみだ。

【Eマガジン 編集部】
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