バブル景気に沸き立つ1987年、先代のAE86までのFRから一転、FFレイアウトを採用してフルモデルチェンジを受けたAE92系レビン&トレノ。カローラシリーズとしては6代目、レビンとしては5代目となり、ボディ形状は3ドア・ハッチバックが廃止され2ドア・クーペに1本化された。
このAE92が意外だったのは、歴代モデルで最も販売台数が多かった事である。また、その台数の多さ故、中古市場で早くから値崩れを起こし、輸出や解体されてしまい、日本国内の現存台数が少なくなってしまったというのは皮肉な話。当然ながら最後のFRとなったAE86の、後年の異常なまでの人気も影響があるだろう。
団塊ジュニア世代には思い出深いAE92
僕を含む第二次ベビーブーム世代にとってみれば、高校を卒業し免許を取得、最初の愛車としての選択肢に、走りを優先したAE86か、装備の充実したAE92かで悩んだ人も少なくないと思う。当時はAE86もAE92も中古車相場がそれほど変わらなかった印象がある。
そんな大学時代、僕はオートバイを2台も所有していたためクルマは家の軽四で我慢していたのだが、ある日後輩のオカモト君が真っ白で極上なAE92のGT-Zを購入し、学校に乗り付けて来た時は正直羨ましく、まさに真っ白なボディが眩しかった。
余談ではあるが後日、週末の夜に仲間と走りに行った山道で、友人のクルマに横乗りしていた僕の目の前、オカモト君のAE92は緩いコーナーにオーバースピードで進入、テールスライドからバランスを崩しコーナー内側のコンクリート擁壁に派手にクラッシュしてしまった。何とも後味の悪く、そして僕のAE92に関する最もインパクトある思い出?だ。
ハセガワのAE92は最上級モデル!
閑話休題、ハセガワからこの度発売となったAE92レビン、再現されるのはNA(自然吸気)最上級モデルのGT-APEX。正確な販売台数は把握してないが、走りと豪華装備のバランスが取れた売れ線グレードである。
ボディパーツは前後バンパー、ボンネット、サイドステップ、リアスポイラー、サイドモール等が別パーツとなっており、ハセガワのこれまでの流れから見てもバリエーション展開を考慮してのことであろう。それぞれのパーツのフィッティングは申し分なく、気持ち良いほどパチピタで決まる。
今回、ボディカラーはオプションで用意される黒と金のツートンカラーである『シューティングトーニング』を選んだ。当時、スーパーホワイトと並んでよく見られたカラーである。
シャシーはエンジンレスながら巧みなパーツ分割により塗り分けが容易であり、高い再現度と組みやすさが両立された足回りもリアリティ満点である。もちろんアライメントも的確で、仮組みしなくとも問題なく四輪接地する辺りは流石である。
ミニソアラのニックネームに納得!
インテリアは実車ではGTV以上の上級グレードに採用されたスポーツシートが用意され、特にGT-APEXの特徴的なシートパターンやドアトリムの柄はデカールで再現となる。
フロアは既にアナウンスされているグループA仕様と共用のため鉄板剥き出しのスパルタンな状態となるが、シートを取付け、ボディと組み合わせてしまえばほとんど見えなくなる。
灯火類の表現も素晴らしく、テールランプこそ複雑な塗り分けを必要とするが、インスト通りに塗装すればかなりのイケメンとなる。
組付けには同じハセガワから発売されているトライツール・両面粘着シートTF25を使用した。この両面粘着シート、貼り方に少々慣れが必要ではあるが使用方法をしっかりと把握すればかなり重宝する。
接着剤だと漏れやはみ出しから周辺を汚してしまいそうな箇所におすすめである。貼ってすぐなら貼り直しもできるうえ24時間ほどでしっかり固着するので僕の中ではもはや必須アイテムとなっている。
今回の作例でも灯火類全般、エアロパーツ、ドアミラー、ワイパーブレードのガラス面への密着固定などに使用した。
そうして完成したAE92レビンを卓上であらゆる角度から眺めているうちに懐かしさとともにとても魅力的に感じた。
当時「ミニ・ソアラ」と称されたのも納得できる伸びやかなデザインを破綻なく5ナンバーサイズにまとめた巧みさ。必要にして十分な装備とパッケージング、スポーティなエンジン、所有欲を満たすクオリティ。現代の交通事情、安全基準では実現不可能なのだろうが92レビンはバブルが生んだ隠れた名車であろう。
もちろんハセガワのAE92レビンは決定版といって差し支えないことも付け加えておく。(吉田史洋)
modelcars vol.293