国内外のフィルソンの愛用者やショップを紹介している企画 LIFE with FILSON。
今回登場するフィルソンガイは、フライフィッシング好き界隈では有名な杉坂友大郎さん、杉坂渓亮さんの二人。
連載最終回となる今回はファミリーで経営するフライショップにお邪魔して、彼らの活動、今後の目標について伺った。
杉坂親子が経営するフライのプロショップ

内装のほとんどを自分たちで手がけたという店内は、ウッドを基調としたどこか海外っぽさを感じる雰囲気。入って左手には各種ロッドが並ぶ。
「World Wide Anglers」は2012年創業のフライショップ 。渓流、本流、湖、管理釣り場、ソルトウォーターと、想定される全てのフライフィッシングで必要十分な道具を販売しているほか、自社でプロデュースしているK・Bulletのフライ用品もフルラインナップで取揃える。

リールはK・Bulletを中心に、デンマークのメーカーSIERRA、イギリスの名門HARDYなどをラインナップ。スタイルによって自由に選べる幅をもって販売中。
店があるのは、徳川家康生誕の地としても知られる岡崎城のほど近く。市民の憩いの岡崎公園や乙川へも徒歩でいける、程よく街で、程よく開放的なロケーション。
ビルの二階にある同店は、釣具屋というよりやっぱりフライショップだ。これは筆者の偏見が入るが、フライマンはモノ好きが多いのだろう、どこかクラシカルで、商品の見せ方もただ陳列しているという感じでもない。
構成としては3分の1がフライのマテリアル、3分の1がロッド、リール、ライン類。もう3分の1がアパレルや雑貨といった具合。店内奥にはタイイングスペースが設けられていて、タイインのレクチャーや相談も受け付けている。

「自分の作った毛針で魚と騙し合いをする、それがフライフィッシングです。まだ見ぬ魚を思ってコレを巻いている時間もまた釣りうちです」。Cotton Henley Guide Sweater ¥49,500
フィッシングギアとしてのフィルソンの魅力

使い勝手が良いガイドベストは大定番。クラッシックな見た目と耐久性が高いカバークロスコットン生地で丁寧に作られている。Fly Fishing Guide Vest ¥51,700 WOOL PACKER HAT ¥15,400
スペースの限られた店内だからこそ、自分たちが自信を持ってお勧めできるこだわりだけを取り扱う。そんな店の入り口付近にはフィルソンのアイテムが並ぶ一角があり、ベストやキャップを中心に釣りと親和性のあるアイテムがセレクトされていた。
「ライフスタイルやファッション、車など、もともと自分たちが好きなものはローテク。僕たちが作る商品自体はハイパフォーマンスを目指していますが、基本的にフライフィッシングについても近いものを感じています。道具一つ一つにしても原始的なものが多くて、だからフィルソンに魅力を感じるのかもしれません。」

自社製品から海外で見つけた珍品まで

こちらは完成フライ。海外のメーカーに日本にいる虫の資料を送り、それを模したフライをオーダー。近くで見ても本物と見まごうクオリティ。
彼らが目指すのは、フライフィッシングという遊びを1から10までをサポートできる集団。その大きな一端を担うのが、この店でもある。そのために最良の商品を求めて自社開発の製品を作り、海外に優れたものを見つければ買い付ける。

前回岡崎トラウトポンドで友大郎さんが使っていたタックル。ロッドは先日発売したばかりの新作K・Bullet Quick 8ft #3。シールドドラッグシステム搭載のリール K.Bullet TLX#2-4。ラバーコーティングのSUGISAKA NET ビッグトラウト。
フライフィッシングのプロである彼らが生み出しているオリジナルブランドは、もともと父である杉坂研治さんが立ち上げたもの。今では開発を任されているが、二人にしては苦労もあったそうだ。
「この仕事をはじめて十数年になりますが、4年ぐらい前までは父親の手だったんですよ。父親が頭脳で、自分たちがそれを具現化するために働く。そういう風にしながら竿やリールの作り方。ものを開発するってどうすればいいんだろうと7年ほど学んできました。その間にインストラクターの資格をとったりだとか、フライキャスティングの大会で表彰台に登ったりだとか、釣りの技術でも実力がついてきて、この3年位でようやく製品づくりも任されるようになったんです」
そんな思いの詰まったアイテムたちだからこそ、あまり卸売を行わず、販売は店とHPでの直販をメインに。ユーザーに自分たちの言葉でダイレクトに良さを紹介したいのだという。
自社製品はローカルに展開する一方で、店を物色していると、世界中から取り寄せた珍しいもの目に付く。

みんなで一緒に進めているKenCubeの事業。店に立つことが多い渓亮さんも直接会話してお客をサポート。Mackinaw Wool Vest ¥25,300、Alaskan Guide Shirt ¥20,900

ワールドワイドアングラーズという店名は、世界を釣り歩く杉坂ファミリーの事でもあり、日本のフィールドに通い、そこで得た知識を持って広い世界で挑戦するという心意気の現れ。
「誰がこんなものを作ったんだ!っていう、驚いて気分が高揚がするものが、誰も知らなかったというものが極たまにあるんですよね。そんな発見があった時は心がワクワクするし、それを使ってもらったユーザーさんの声とか表情が励みになって、フライショップを営んでいく原動力になります」。と友大郎さんも語る。
地元のビールを飲んで、次なる目標を考える
前回の記事でも触れたように、フライフィッシングを通して、自分たちが生まれ育った地元のへの還元、関わりを作ることも考えているKenCube。仲の良い地域の仲間や、市の担当者を巻き込んで交流しているそうだ。

オーナーは研究者として岡崎市に赴任してきたものの、岡崎に惚れてブリュワリーを立ち上げた人物。店ではシカゴスタイルのピザも提供する。
仕事終わりにたまに立ち寄るという「イザカヤ・ジャ・ナイ」は、シカゴ出身のクレーグさんによる醸造所「HYAPPA BREWS」のタップバー。岡崎市を愛する者同士でコミュニケーションをとりつつ、自分たちが楽しみながら地元を盛り上げる方法を語ることも。

岡崎の歴史と伝統をリスペクトし、ビールには地元の原料や自分たちで育てたむらさき麦も使用。家康Bは苦味の効いたエール。岡崎嬢はフルーティーなケルシュスタイル。
最近は市の中心を流れている乙川を中心に街を盛り上げようという動きが盛んで、岡崎市が地元企業と組んで周辺をリバーフロントとして整備、発信している。
この川自体はフライフィッシングの対象魚となる鱒科の魚は少ないそうだが、杉坂兄弟にとっては新しい表現の場場として活用させてもらっているのだという。

川向こうに岡崎城が見える乙川の河川敷は、週末限定でキャンプ場としても開かれている。家からも近く、お子さんと一緒に気軽に週末キャンプを楽しめる。
「この間はイベントの催しで、子ども達や初めての人が参加するキャスティング的当てゲームを開催したり。また、全国から選手が集まるキャスティングの競技会を開いて、市民の人に対して川遊びの一つとしてフライフィッシングの魅力をアピールすることができました。」
釣り場にいない人達に対しても、フライフィッシングを通して貢献できることはなんだろう。どうすれば一歩踏み出して釣りを試してくれるんだろう。二人は裾野を広げるため、未来のフライマンのために、メディアでの活動、Youtube動画に積極的に行なっているのだ。

超定番のマッキノークルーザーは、100%ヴァージンウールの保温性を発揮。Mackinaw Cruiser ¥57,200、Mackinaw Wool Vest ¥25,300、Double Mackinaw Cap ¥17,600、Oil Finish Double Tin Pants ¥35,200
「より多くの人にフライフィッシングの魅力を知ってもらいたいというのが僕らの想い。それがわかるのは、やっぱり魚を釣り上げたときだと思うんです。渓流や源流、苦労してたどり着いてやっと釣り上げることも喜びの一つですが、それはあまりにハードルが高い。だからまずは興味を持ってもらい、近くにある管理釣り場に行ってほしい。キャンプに行くような感覚で、いやもっと気軽な感じで管理釣り場に行ってもらいたいですね。僕たちはこのスタンスで、フライフィッシングがより多くの人の遊びの選択肢に入るよう発信し続けるつもりです」

厚手のマッキノーウールながら、クルーザーより軽快に着られるジャックシャツ。MackinawJac Shirt ¥53,900、Original Lined Goatskin Gloves ¥24,200
動画:杉坂兄弟が語るフィルソン
杉坂兄弟の取材を通して、毎回違った角度から彼らの人柄、活動に迫った今回のLIFE withFILSON。
遊びに信念を燃やし、仕事を楽しみ、何よりフライフィッシングを愛しているお二人の姿を全3回の記事でお伝えできたように思う。
最後は彼らにフライフィッシングとフィルソンに感じていることについて語ってもらった。
【Information】
杉坂兄弟Youtube:SUGISAKA Brothers
Instagram(友大郎さん):@yutaro_sugisaka
Instagram(渓亮さん):@keisuke.sugisakabros
World wide Anglers
Address:愛知県岡崎市康生通西2丁目24番地 杉坂ビル2F
Tel:0564-83-8461
https://k-bullet.com/worldwide/
イザカヤ・ジャ・ナイ
Address:愛知県岡崎市明大寺本町4-69-1
Tel:0564-23-7552
https://izakayajyanai.owst.jp/
FILSON商品の問い合わせ
Filson Tokyo Store
Tel:03-6416-0768
https://filson.jp/
Instagram:@filson_tokyo_store
Movie:Good Feeling
Photo:Daisuke Akita
Text:Junpei Suzuki